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高濃度PCB問題の経緯


かつて有効な物質として生産され・使用されてきたPCBは1968年(昭和43年)に発生したカネミ油症事件をきっかけに生体への影響・環境汚染が大きな社会問題となり、生産が中止、1974年(昭和49年)までに製造・輸入・開放系用途での使用・新規使用が禁止されました。それ以降、多くの民間企業が処理施設の立地を試みましたが、地元の理解を得られず長期間、処理されることなく保管・継続使用されてきました。

処理実現のためのその活動が再び動き出したのは使用禁止となってから30年がたった2001年(平成13年)のことです。
ストックホルム条約の締結により、国内法「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定を受け、環境安全事業株式会社(JESCO 現:中間貯蔵・環境安全事業株式会社)が設立されました。こうして2027年3月31日までのPCB廃棄物全廃のため、期限内処理に向けた処理がようやく動き出したのです。

しかし、PCBを燃焼するとダイオキシンが生成することから、焼却に代わる技術として化学的な分解や、その前処理として溶剤による洗浄、真空を用いた分離法などの研究が開発されることとなりました。
現在は、環境省、各自治体、全国5箇所にあるJESCOを中心に、期限内処理に向けた実態把握のために、掘り起こし調査など、処理推進体制づくりを強化していますが、未届の継続使用中の機器も多く期限内処理の課題は未だ多く残っているのが実態です。

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高濃度PCB廃棄物は、処分期間を過ぎると事実上処分することができなくなります。PCB廃棄物は定められた期限までに処分しなければなりません。

出典:環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb_soukishori/

真空加熱分離(VTR)法について

「真空」とはひとことで言えば、容器内の空気を減らすことです。この「真空」下では『蒸発が促進される』『酸化を防ぐ』というような現象が起こります。VTRは真空密閉な炉内で、物質固有の蒸気圧の差を利用し、分離回収する技術です。環境への負荷を最小限に留め、それぞれの物質を酸化せずに純粋な状態で回収します。この技術により従来の物理的な方法では分離できなかったものの分離も可能となりました。

VTRはALD社が50年以上にわたって蓄積した真空、冶金、熱処理技術を地球環境の保全を目的に完成した技術で、1996年には二次電池の新しいリサイクル技術として、フィリップモリス環境研究賞を受賞しています。

JESCOへのVTR装置能納入実績

VTR装置は洗浄工程で不合格となった絶縁紙等、分離が難しい含浸物をPCB油とその他対象に分離を行っています。

合計8基の納入実績

JESCO北九州事業所(1期施設・2期施設)【4基】

2004年12月に1期施設で1基、2009年6月に2期施設で3基のVTR装置が操業を開始。分離されたPCB油は、「金属ナトリウム分散体法(SD法)」により化学的に分解されます。

JESCO大阪事業所【4基】

2006年10月に4基のVTR装置が操業を開始。分離されたPCB油は「触媒水素化脱塩素化法(Pd/C法)」により化学的に分解されます。

VTRの特徴

真空加熱分離(VTR)法は、PCBを含むトランス、コンデンサ、安定器等の電気機器からPCBを安全にかつ確実に分離回収する技術です。これら電気機器を真空に保持された真空処理室内で加熱すると、PCBは沸点に達して蒸発し、そのPCB蒸気はオイルシャワー側に吸引され、冷却されることによって凝縮し、液体として回収されます。

  • 真空状態で処理するため、PCBが環境中へ漏洩することがありません。
  • トランス、コンデンサ等電気機器を切断、破砕による事前の解体処理が不要なため、PCB暴露による作業者への健康被害あるいは周辺環境への汚染がありません。
  • PCBを蒸発させて回収するため、処理が困難とされる紙・木・繊維等の含浸物の処理が可能です(特別管理廃棄物の判定基準値以下)。

真空加熱分離法の概要

物理法則に基づく原理

異なる物質の蒸気圧

VTRは、真空密閉な系内にて個々の物質を分離・回収するリサイクリング技術です。物質固有の蒸気圧の差を利用し、一定の圧力および温度に制御することにより、蒸発する物質としない物質とに分離します(右図)。
右図に見られるように有機物、無機物に関わらず、全ての物質の蒸発温度は圧力の減少により低下するので、大気圧に比べ低い温度つまり少ない熱エネルギーで物質を分離・回収することが可能です。

本プロセスでは、処理対象物をVTRに投入し、真空処理室を真空に脱気後、所定の温度に加熱します。その間、目的の物質を蒸発させ、蒸発した物質は凝縮器にて冷却し、液体あるいは固体として回収します。蒸発しない物質は真空処理室内に残留するので所定温度に冷却後、取り出します。

本プロセスにより、水分およびほとんどの有機物は蒸発し、処理室内に残留するものは炭素と沸点の高い金属のみとなります。

技術評価

PCB廃棄物処理技術は、「PCB等処理技術調査検討委員会」(環境省、事務局:(財)産業廃棄物処理事業振興財団)により技術評価されます。当社が技術評価を受けた技術は以下の通りです。

01真空加熱分離(VTR)法

本技術は、「難分解性有機化合物処理技術検討評価委員会」(環境庁、通産省、厚生省)から平成11年に、「PCB汚染容器処理/廃感圧紙処理」の実用化可能な技術として技術評価を終了しました。

02溶融還元熱分解法

本技術は、「PCB等処理技術調査検討委員会」(環境省)から平成17年に、「PCB汚染物(安定器、感圧複写紙、ウェス、汚泥)」の実用化可能な技術として技術評価を終了しました。(住友金属工業株式会社、三井造船株式会社と3社共同。)

適用例

Hg蛍光灯リサイクル処理事業

蛍光管内部に封入されている蛍光粉には微量の水銀が含まれるため、適切に分離・回収及び処分を行う必要があります。2000年10月にVTR装置を納入したJFE環境の蛍光灯処理プラントおいて、現在でも水銀分離・回収の要として稼働この真空加熱処理により99.99%以上のHg分離・回収が実現しております。

Cd乾電池・二次電池のリサイクル処理事業

Ni-Cd電池やリチウムイオン電池の利用は拡大の一途を辿っていますが、有効な資源としての回収が急務ですが、複合物となった電池からの分離は困難を極めます。加えてこれらの金属は有害物・危険物としても取り扱う必要があります。

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VTRに関する問い合わせ先 TEL:03-5961-3016
担当:市場開発部 村井(むらい)
PCB全般に関する問い合わせ先 TEL:04-2900-0133
担当:松田産業株式会社 環境ソリューション事業部
ロジスティクス部 物流課
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